日本帝国陸海軍電探開発史

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カテゴリ: 陸軍電探開発史

タチ25

日本無線史からの抜粋
地上用電波標定機 タチ25
移動式、ドップラー方式
部分研究終了、第二次兵器として設計中のところ爾他緊急研究事項の関係上昭和19年度(1944年)下期中止
 タチ25

Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan, 1945-1946 E-1 分冊E-13に以下の文面がある。
Ⅲ. 当社が実施したマグネトロン研究の課題(H.今井)
(d) 電波標定機でインパルス方式を用いた場合、山のような固定物体の有害なイメージを指示器から排除することはできない。 しかし、ドップラー効果を適用すれば、高速で移動する物体だけを検出でき、さらにその物体の絶対速度を測定することができる。 後者のデメリットは、ノイズのない安定した高出力の連続デシメータ波を得て、直読で距離を測定することが難しいことにある。 この報告書の筆者である今井氏のもとで苦労して開発された電波標定機(ロケータ)の概要は次の通りである。
波長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20cm
送信機・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12分割マグネトロン(空冷式)
アンテナ出力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150W(連続)
検波器・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・水晶
放物面の直径・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.5 メートル 
測距システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・F.M.
有効距離・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中型爆撃機では25km 
                                     B-29では40キロ
なお、本電波標定機(ロケータ)が実際に使われるようになったわけではない。

上記の当社が実施したマグネトロン研究の課題(H.今井)の資料では、メーカー名も機種名もありませんが、ドップラーレーダーの試作品であることは確かである。
これを裏打ちするような資料として、「東京芝浦電気株式会社八十五年史には18年9月、多摩陸軍技術研究所川崎研究室が川崎本工場内に設けられ、軍・民共同で電子工業(電波兵器)の研究および量産にあたるこことなった。」とあるので、上述のマグネトロン研究の課題(H.今井)の資料のメーカー名については、東芝の電子工業と断定できる。
なお、電波兵器-電子研が、試作または内示をうけて生産したものは、つぎのとおりである。
タセ3号         10台   20台   ※タセ2号の記述ミス
タチ23号(G2)               5台    -    ※タチ4号の記述ミス
タチ31号(G4)     10台   25台
タチ25号(ち8号)    1台
これらの資料からReports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan, 1945-1946 E-1 分冊E-13の資料が「タチ25」ということと思われる。


参考文献
「日本無線史」9巻 1951年 電波管理委員会 
Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan, 1945-1946 E-1 分冊E-13
東京芝浦電気株式会社八十五年史 昭和38年12月 総合企画部社史編纂室

8. 日本無線史分の電探追加資料(Japanese Army Radarに記載なし)
地上部隊レーダー
地上用電波警戒機 タチ22
超短波警戒機乙、小型移動用(タチ22)
第二次兵器として試作概成の状態にて昭和19年度(1944年)下期中止

地上用電波標定機 タチ25
移動式、ドップラー方式
部分研究終了、第二次兵器として設計中のところ爾他緊急研究事項の関係上昭和19年度(1944年)下期中止

地上用電波標定機 タチ27 → 沖電気社史に記載(詳細不明)

地上用極超短波探索機 タチ30
第二次兵器として周波数帯の相当広いものを研究中であった。
別に昭和19年(1944年)下期B29装備電波暗視機の電波探索のため地上用極超短波探索機(タチ30)を研究試作し直ちに実用に供した。
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本機は当時入手した独逸の対「ロッテルダム」装置(英軍機上電波暗視機)電波探索機に比して性能遥かに勝れたものであった。
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諸元算定装置 タチ36の一部
警戒機及び誘導機により求めた彼我の飛行機の位置を投入し未来交会点に至る方向、距離を算定する。
算定精度方向正負2度、距離30秒×航速、重量40Kg、試作会社横河電機、試作1号機被爆焼失引続き試作中、2号機は藤ヶ谷に於て実用試験中。

戦況現示具 タチ36の一部
彼我飛行機の航跡を映写幕上に表示す。
重量500Kg、試作会社住友通信、製作工場焼失したため一応研究中。
本装置は元来同時在空36機の位置測定能力を有するのであるが、とりあえず関東地方西半部の敵機捕捉網と在空友軍機8機測定の私設との完成に努めたのであった。
司令部は松戸、また中継所は筑波-松戸-大山に設置せられた。
因みに放探式電波誘導機の外国制式性能諸元は次の如くである。
独逸Y装置(?)
対飛標定距離300Km(高度最大8Km)、測距精度正負700m、測角精度0.1度
英国TR1355型
対飛標定距離、高度1Kmの場合500Km、高度4Kmの場合600Km(制度正負600m)、高度10Kmの場合750Km


航空機搭載レーダー
電波探索機 
機上用甲 タキ4 自動記録方式
波長7-1.5m、利得100db、有効距離250Km、波長測定精度正負1%、重量250Kg、試作会社東洋通信、実用化一応済、安定性能不良のため性能向上研究中、工場被爆生産中止。

機上用乙 タキ5 等感度方探方式
波長1.5m、利得120db、有効距離300Km、波長測定精度正負1%、方向探知精度距離200Kmに於て正負5度、重量50Kg、試作会社東洋通信、実用化及び生産化済、但し生産30機、工場被爆爾後生産中止。

機上用丙 タキ6 自動周波変換方式
波長7-0.8m、利得110db、有効距離200Km、波長測定精度正負1%、重量32Kg、試作会社東洋通信、実用化及び生産化済、但し工場被爆爾後生産中止。
第二次兵器飛行場用甲として「タキ4」、「タキ5」、「タキ6」を統一せる標準型「タキ26」波長距離7-0.4mのものを研究中であった。
別に第二次兵器飛行場用乙「タキ29」を海軍側担当研究中であったが陸軍としては実用化するに至らなかった。

電波妨害機
機上用 タキ8
波長7-1.5m、出力連続70w、衝撃1Kw、手動又は自動同期方式、妨害距離100-300m、重量200Kg、試作会社日本無線、応急生産10機、実用化済。
タキ23 → URLリンクのみ(海軍側で記載している)
なお、第三次兵器として「タキ8」、「タキ23」を統合せる標準型「タキ33」を研究中であった。

電波高度計
高々度用 タキ11
波長78-82cm、先頭電力200w、測定可能高度1200-250m、測高精度正負1%、重量25Kg、試作会社東京無線及び川西機械、実用化済及び生産化済。

低高度用 タキ13 1型及び2型
波長75-90cm(1型)、86-94cm(2型)連続出力2-3w、周波数変調正負15Mc、測定可能高度15-120m(1型)、15-200m(2型)測高精度正負10%、重量25Kg、試作会社東芝通信、1型実用化済及び生産化済、2型1型の安定性を向上せるもの研究及び生産化済、実用化準備中。
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高度計試作品

電波測距機
電波測距機 タキ25
測距15Km-500m、測高1000-20m、測距精度正負100m、測高制度正負10m、測角精度正負1度、本機は第二次兵器として海軍側担任研究中、陸軍としては実用化するに至らなかった。
因みに独逸電波高度計FUG-101型の性能諸元は、測高高度15-150m及び150-1500mの二段切換、測高制度正負10%であった。

双曲線航法装置
双曲線航法装置 タチ39とタキ39
昭和19年(1944年)半ば頃英軍の欧州方面、米軍の太平洋方面に於ける双曲線航法装置に関する技術情報を入手し、これに刺激せられ我方としては「サイパン」攻撃等の場合を考慮し急速に白浜-箱根-御前崎を基線とする施設を設けることとなり、それら地点に1Kw送信機を設置し、これを逓信省式超短波軽多重通信機を以て連結し、完全なる同期送信を行う如く計画を進めた。
そして第四航空技術研究所の援助及び海軍側の協力の許に試作即戦力化を期して完成に努めたのであるが、竣功を見るに至らずしてしまった。
地上部 タチ39
周波数1.5-1.75Mc、尖頭出力150Kw、航法可能距離昼間900Km、夜間3000Km、重量600Kg、試作会社住友通信、概成、一部建設中のところ被爆焼損。
機上部 タキ39
周波数1.5Mc、測距離精度正負1%、重量50Kg、試作会社日本無線、研究済、とりあえず教育用仮作機により教育実施中。


船舶搭載レーダー
電波探索機
艦船用甲 タセ4
波長範囲4-0.8m、概略の方向探知、試作会社東洋通信、生産化及び実用化済、第二次兵器艦船用乙「タセ9」を海軍担任研究、陸軍としては実用化するに至らなかった。

船舶用電波標定機 タセ7
海軍側担任(対艦船105-S2、対艦船対空両用S3相当)
第二次兵器として研究中、陸軍としては生産化するに至らず。
標定距離対大艦30Km、対小艦20Km、測距精度正負50m、測角精度0.5度。


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参考文献
[a1] Japanese Army Radar
[a2] 「日本無線史」9巻 1951年 電波管理委員会
[a3] 「続日本無線史」第一部 昭和47年 続日本無線史刊行会




































誘導機整備教程第1巻 タチ13号1型


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参考文献
誘導機整備教程第1巻 タチ13号1型 アジア歴史資料センターリファレンス番号:A03032156800




7.6  タセ11:
その他の名称:なし
この装備は、ターゲットを捕捉するために陸軍の "四式肉薄攻撃艇装置"(特攻ボート)に使用するために適応するように、わずかに修正されたタキ2 AIレーダーである。
押収された文書はそのような装置の存在を示し、1945年2月にフィリピンで鹵獲された装備の完全な装置(銘板は入手できなかった)が検分された。
最近の捕虜からの尋問により今までの推論を確認したが、機器が操作上使用されたかどうかは分かっていない。
以下の詳細を除き、機器は同一である:
 1)送信用と受信用の2つの八木アレイが使用されている。
 2)セルシン制御遠隔距離計は使用されなかった。
 3)追加指示装置は使用されなかった。
以前の参考文献はセクション22 RS 0024およびRS 0026に見られる。

日本側の資料である日本無線史第九巻からの抜粋
船舶用電波警戒機 小艇用超短波警戒機(タセ一一)
対艦船探知距離三粁、(概略の方向)機上用電波警戒機(タキ二)を転用したものであって実用化済。


7.5 タセ10:
その他の名称:なし
タセ10は、1944年後半に開発され、製造された。
これは接近する航空機への警戒情報を提供するように設計されており、輸送用潜水艦(タイプII)に使用された。
完成時には、レーダーを設置するのに適したサイズの潜水艦が1つしかなかった。
この潜水艦には十分な電力が供給されなかったため、試験が完了できなかった。
この時までにいくつかの装置が作られていたので、アンテナ用に3x2のマットレスアレイを使用して地上利用のために残りの部分を修正した。
元々設計されていたように、この装置は半波長スタブアンテナのみを使用していた。
適切に装着された場合、あらゆる方向からの航空機の接近を警告するが、距離情報のみを得ることができる。
興味深い珍しい設計上の特徴や技術的な詳細はない。
東京芝浦電気は潜水艦用や陸上用を生産した。
諸元表
Frec mcs ---------------------------------- 150
Prf、cps ---------------------------------- 250
尖頭電力出力------------------------------- 10 kw
送信(Xm)アンテナ----------------------------船体の上に取り付けられた半波垂直ダイポール、または3x2マットレスアレイ
受信(Rcvr)アンテナ--------------------------共用T-R
Horizontalビーム--------------------------- 360°(無指向性)
IF、mcs .---------------------------------- 10
IF帯域幅----------------------------------- 500kc
Rcvr利得----------------------------------- 120 db
較正範囲----------------------------------- 0?100 km
最大範囲----------------------------------- 50 km
距離精度----------------------------------- 3 km
方位角(Az)精度-----------------------------なし
電源---------------------------------------インバータ、入力25V 20A、出力100V。 AC、1Ф、50CPS、750VA
重量---------------------------------------- 100キログラム
[a1] Japanese Army Radar
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日本側の資料である日本無線史第九巻からの抜粋
船舶用電波警戒機 特殊輸送潜水船(ゆ)用超短波警戒機(タセ一〇)
周波数一五〇Mc、尖頭出力一〇kw、対飛警戒距離五〇粁、測距精度正負三粁、測角精度正負三度、重量一〇〇瓩(除空中線)、試作会社東芝通信、研究完了せるも(ゆ)の電気装備未完成のため実用化するに至らず、応急的に多数整備せるまま中止。
[d2] 東京芝浦電気株式会社八十五年史
当社は多くのレーダー開発・製造を行ったが、社史では何故かこの「タセ10」と思われる写真を掲載している。
いくら生産努力しても、搭載する潜水艦がなければ無駄となるが、これが戦争なのだろう。
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