昭和18年9月駆逐艦「島風」零感度用電磁ラッパを用いた電探射撃、発射に関する実施及びその経過と成績・所見について

旧軍無線機に関する大量のYahooオークション取引情報を永年PCにバックアップしていたが、このままではデータの塊に過ぎず情報利用が困難なことから、データベース化すべく整理するこことした。
オークション取引情報のデータは2004年から取得しているので、あらためて20年前の2004年から調査を開始したら途端に下記の「昭和18年9月駆逐艦「島風」零感度用電磁ラッパを用いた電探射撃、発射に関する実施及びその経過と成績・所見について」下記の9つのオークション取引情報をPCから発掘した。
1.電探射撃事前準備 駆逐艦「島風」機密兵器新設の請求書類3枚
2.電探射撃実施計画 軍極秘 駆逐艦「島風」機密第15号の9 他1枚
3.電探射撃実施細目 軍極秘 駆逐艦島風電探利用研究射撃実施細目
4.電探訓練研究目的 軍極秘 駆逐艦「島風」機密第15号の11 他に1枚
5.電探訓練研究目的 軍極秘 島風機密命令第15号の2・第15号の3
6. 島風電探射撃実施、経過の概要 駆逐艦「島風」電探射撃表 海軍用紙24枚
7. 島風電探射撃実施経過・概要及び成績・所見 軍極秘 駆逐艦「島風」電探利用射撃実施計画と成績・所見
8.電探取扱調整参考資料 軍極秘 電波探信儀取扱調整参考資料 第二艦隊司令部
9.電探参考資料 軍極秘 第五艦隊機密文書 電波探信儀参考資料
このオークション情報は多くのガリ版刷りの文書であるが、生データの貴重な起案文書も見受けられる。
残念なことに、すべてYahooオークション取引情報のため見本の3つの写真データしか掲載されていないので、断片的な内容の情報しか把握できない。
当時は、日本のレーダー開発には余り興味もなく入札には参加していなかったようだ。
このYahooオークション取引情報をもとに「昭和18年9月駆逐艦「島風」零感度用電磁ラッパを用いた電探射撃、発射に関する実施及びその経過と成績・所見について」の実態を明らかにするこことした。

島風 (島風型駆逐艦)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E9%A2%A8_(%E5%B3%B6%E9%A2%A8%E5%9E%8B%E9%A7%86%E9%80%90%E8%89%A6)
6. 島風電探射撃実施、経過の概要 駆逐艦「島風」電探射撃表 海軍用紙24枚
出品者の情報
出品者(評価): yamato_ozawa (617)
商品の情報
現在の価格: 7,000 円
残り時間: 1 日 (詳細な残り時間)
最高額入札者: edt156v_2003 (18)
数量: 1
入札件数: 1 (入札履歴)
開始価格: 7,000 円
入札単位: 250 円
出品地域: 公開されていません
開始日時: 2004年9月 21日 11時 41分
終了日時: 2004年9月 28日 21時 41分
オークションID: g6146367
商品の情報
使用輪18年9月5日 内海西部海面において島風の搭載する電探全てを利用射撃・雷撃射撃を行い その実績と所見(故障改良等)を記録したもの。
其の他配員状況・電探員の技量程度・学校教育に関する艦側の所見(学校教育と実戦の差) 
電探及び電波探知機装備図・電探室内装備図・探信記録・故障状況調査表・附加装置等図入り多数 
このときの目標艦は日本丸 駆逐艦 浮上潜水艦
 b-2
【文字起こし版】
駆逐艦「島風」電探射撃(通校委員)
一.島風電探射撃実施、経過の概要
 主要訓練研究項目に対する経過〇並所見
1.電探の全幅利用する駆逐艦射撃雷撃
2.島風装備電探の誤さを測定・精度に及ぼす影響
 (測距各精度及び成績表別紙参照)
3.兵器施設配員の検討
(一)兵器施設
1.能力
2.兵器改善を要する事項
3.兵器改善事項
(二)配員
三.其の他雑件
1.電探射撃通信連絡装置
2.電探射撃の標的
3.電探故障状況(射撃当日)
4.電探室及兵器各部温度調査表

b-3
 
八.附加装置(零感度用電磁「ラッパ」)に就て
(一)〇〇附加装置は第一図の如く甲、乙二個の電磁「ラッパ」を有し従来に比し多少「ラッパ」は小型なり(口径415(内径390)長さ680)
乙電磁「ラッパ」は第三図に示すが如く甲電磁「ラッパ」より4cm程度長〇〇外 尚B点に於ては細かに長短調整可能が如く螺旋となしあり
第一図 (附加装置)マスト上に当たるめ実験中仮装備せしもの
第二図 附加装置電磁ラッパ(受信用)送信用
第三図 (附加装置)
2.作動原理
二個の「ラッパ」の長短即ち〇・・・・
【考察】
従来の2号電波探信儀2型水上見張レーダーは、アンテナが受信用の電磁ラッパ1本と送信用電磁ラッパ1本で、電磁ラッパの口径は400mmの構造である。
空中線(Antenna Unit)
電磁ホーン(口径480mm、長さ950mm、アンテナ利得13db)、円形導波管(口径75mm)
 b-4

受信用電磁ラッパ1本を使用して方位角測定には最大感度法を用いたため測定精度は高くなく、基本的には水上見張レーダーとして採用されている。
今回射撃管制レーダー用の附加装置(零感度用電磁「ラッパ」)として、受信用に左右2本の電磁ラッパを用いた等感度法により、方位角の測定精度の向上を目指している。
ここで、問題なのは本資料が作動原理に関する項目が、「2.作動原理二個の「ラッパ」の長短即ち〇・・・・」のみで動作原理の説明資料を見ることができない点である。
このため、動作原理は、こちらで推論せざるを得ない。
通常の2号電波探信儀2型に受信用電磁ラッパに単純に左右2本に改造したアンテナシステムを考えると、左右からの電磁ラッパにより受信信号を受けることになり、目標物にこの電磁ラッパを真正面に向けた場合には最大の受信信号を取出すことができる。
これは、左右の電磁ラッパから入る受信信号が同相であるからである。
今回の射撃管制レーダーとしてのアンテナシステムの特長は、附加装置(零感度用電磁「ラッパ」)と称する2本の電磁ラッパは、(甲)の電磁ラッパがA点で680mmの固定長であるのに対して、(乙)の電磁ラッパのB点で4cm(40mm)の長さ調整が可能なような螺旋構造となっていることにある。
この2号電波探信儀2型レーダーは、磁電管(マグネトロン)を用いた使用周波数3Ghzであることから、波長ではいえば10cmとなる。
これに対して、(乙)の電磁ラッパはB点で4cmほど電磁ラッパ菅長を可変にできる。
これだけの基本情報を元に、定性的な動作原理を説明すると以下の通りと考えられる。
(甲)の電磁ラッパでは管長680mmで波長100mmの定在波が発生していると考えれば、(乙)の電磁ラッパが管長680mm±25mmで長さ調節すれば、こちらの定在波は(甲)の電磁ラッパの定在波と比較すれば、定在波の位相が90度(π/2)遅れることを意味する。
そうゆう意味では、(乙)の電磁ラッパは位相調整器の機能を持っていることになる。
このことから、受信機からみると、(甲)の電磁ラッパから受信する信号波と(乙)の電磁ラッパから受信する90度(π/2)が遅れた信号波を同時に受信できることになる。
これは左右のアンテナから電子的に位相が90度(π/2)異なった受信信号を受信機に同時に印加することになるが、目標物に真正面に向けた(完全調定)時の方位角の場合には受信信号の合成ベクトルは零となるはずである。
これが零感度用電磁「ラッパ」と称する等感度方式の基本原理であり、いわゆる原始的なフェーズド・アレイ・レーダーの元祖といえよう。
 b-4-1

このような仕組みで受信した反射パルスは見張用指示機(Indicator for waring)のブラウン管に見ると、当然Aスコープであるが2号電波探信儀2型レーダーのパルス繰返し周波数である2500Hzの反射パルスがブラウン管に1本の線として表示されるが、目標物に対して電磁ラッパの向きにより、左右の受信信号レベルが異なっているので低くなったり、高くなったり表示レベルは一定とはならない状態として観測される。
この状態で電磁ラッパを目標物に真正面に向けた(完全調定)時には、左右の受信信号の合成ベトクルは零となるのでブラウン管の反射パルスの表示レベルは零なり反射パルスを観測することができなることになる。
この状態の方位角を測定すれば、最大感度法と比較して目標物に対して高い精度の方位角が測定できることになる。
なお、本実験のために従来の2号電波探信儀2型水上見張レーダーを射撃管制レーダーとして改造した箇所は、アンテナ装置の受信用電磁ラッパを付加装置((零感度用電磁「ラッパ」))に変更しただけで、その他レーダー設備には一切の変更を行っていない。
指示機としては、見張用指示機(Indicator for waring)と測距儀(Range Unit)の2つが用意されている。
実験結果については、9つのYahooオークション取引情報の範囲内では、本試験の成否は不明であるが、下記の公式資料により本実験は残念ながら完全な失敗に終わっていることになる。

上記の資料に関しては、公式資料から背景から顛末が下記のように記載されている。
「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会の抜粋版
(対水上射撃用電波探信儀)
海軍の対水上射撃用電波探信儀に対する要望は、戦争初期から一貫して非常に強かった。
しかしその要求性能は著しく高く、常に日本海軍がその性能を誇っていた前橋頂上の主測距儀と同等若しくはそれ以上なることを要求されていた。
即ち戦艦にあっては大口径砲の最大射程即ち40粁乃至50粁の距離に於て測的可能なること、その作動も測距儀と同等若しくはそれ以上に安全にして信頼性大なることが要求され、且つ重量容積に於ても相当過酷な制限が附せられていた。
そのため本機の研究はまず有効探信距離を増大することを主眼としたが、中々にその要求を満たすに至らなかった。
しかるに昭和18年春頃から暗夜又は狭視界時に敵は電波探信儀を用いて射撃を加えて来ることが明らかになって来、これに由って急激に射撃用電波探信儀に対する要求の切実度を増してきた。
即ち有効距離よりも、測的精度及び操縦追尾性能の改善に重点を置くに至ったのである。
ここに於て2号1型に空中線切替装置を附し、2号2型には受信電磁ラッパを2個とし、これに切換装置を附し、左右切換を行う等感度方式として測角精度を向上せしめ、且つ精密測距装置を附して、測距性能を高め、有効距離を幾分犠牲にしたものを作った。
これらをまず戦艦大和に仮装備し、射撃用電波探信儀としての性能実験を行ったが、その結果、一部に改良を施すことに依り、実用可能との一部の結論を得、昭和18年末から昭和19年1月頃にかけ、急速整備の態勢を整えたのであるが、その後の研究の進展意の如く成らず、技術陣は大いに苦慮した。
2号1型は昭和18年末から19年1月にかけ、必死の調製実験が行われ、巡洋戦艦および重巡洋艦に整備を下命されたが、調整困難のためどうしても所期の性能を発揮できなかった。
しかしなお那智その外一、二の艦に対し、装備し実用を計ったが、暫くして整備中止を下命され、装備済のものも撤去復旧せしめられた。
2号2型系のものは、昭和18年10月軍艦大和に於ける実験に使用した切換方式が不完全であることが判り、早くも整備の線から脱落したのである。

研究射撃雷撃の経過について
 b-5
【文字起こし版】
距離3浬にて標的捕捉距角2.2浬にて射撃開始せるも弾着水柱不明 其の他概ね順調に経過せり 下記経路図は電探測距を示す
8.第二日目(9月5日)1100頃より研究雷撃開始する距離15浬より探信開始せるも目標(響)捕捉困難にして距離6.2浬にて捕捉爾後測距に引続き距離3浬にて発射す(発射雷数二本)
感度稍々(やや)不良にして且自艦高速振動に依り直接波反射波共可成り「ピッチング」ありたる他順調に経過せり
9.1200研究射撃雷撃終了各部温度上昇
状況計測 魚雷採取の上1500呉入港

1.電探射撃事前準備 駆逐艦「島風」機密兵器新設の請求書類3枚
商品の情報
昭和18年6月20日 発令 島風艦長 あて先海軍技術研究所長 島風機密第24号の5 24号の6 24号の7の3枚です。
電探用角度受信機の新設・技手派遣の要請等
 c-1
【考察】
昭和18年6月20日時点では島風の仮称2号電波探信儀2型は故障中とのことで、故障原因は真空管の損傷と抵抗器1本損傷で修理部品が呉海軍工廠に在庫なしとのことである。
磁電管M-60、M-311、高圧水銀整流管HV-966A、変調部の増幅管P-220、P-112、受信機の増幅管UZ-6302や回路設計ミスによる格子抵抗器R408番200KΩの損傷等である。
磁電管などはある程度の使用時間で寿命となるために取り換える必要があったのだろう。
戦後米軍の指摘で回路設計ミスに関して軍は根本的に対策を打っていないとあったが、指摘どおりのようである。
ただし、兵員のレーダー保守に関する技術レベルは一般的に高そうである。
実験に関して、新たに艦橋に電探用角度受信機の新設を要望している。
角度受信機とは、セルシンモーターのことで、現代でいうシンクロ・モーターのことである。
新設要望は、アンテナの回転部に角度送信機があり、アンテナが回転に連動して変移情報を電探室にある角度受信機に送信するのだが、今回の試験に合わせて艦橋にも並列接続して角度受信機をもう1台新設して実験結果を直接観測したいといった意味合いだろう。
角度受信機の事例(陸軍のタセ2号のもの)を以下に示す。
c-2

c-3

2.電探射撃実施計画 軍極秘 駆逐艦「島風」機密第15号の9 他1枚
商品の情報
ガリ版4ページ 昭和18年8月27日 第二艦隊機密命令に基づき電探研究射撃の実施・指令及びその計画書 
他の1枚は「軍極秘」島風エンジンの性能表
 d-1


3.電探射撃実施細目 軍極秘 駆逐艦島風電探利用研究射撃実施細目
出品者の情報
商品の情報
ガリ版B4 13ページ 昭和18年9月4日 伊予灘で電探訓練した時の実施細目を指示 
表紙に「軍極秘」の朱印があります。
 d-2


4.電探訓練研究目的 軍極秘 駆逐艦「島風」機密第15号の11 他に1枚
商品の情報
ガリ版2枚 昭和18年9月4日 12.7㎜砲射撃(水上)の要表 江間修海軍中尉を指揮官として50口径主砲の射撃実習要綱を指令 
他の1枚は島風エンジンの性能表
d-3

 
5.電探訓練研究目的 軍極秘 島風機密命令第15号の2・第15号の3
商品の情報
ガリ版6ページ 昭和18年6月10日 第15号の2は主砲12.7粍の訓練射撃命令 
第15号の3は25粍機銃の訓練射撃命令 
実施細目を通達 表紙に「軍極秘」の朱印が捺してあります。
 d-4

7.実施経過・概要及び成績・所見 軍極秘 駆逐艦「島風」電探利用射撃実施計画と成績・所見
商品の情報
薄紙ガリ版と海軍用紙ページ数多数 
昭和18年9月10日 島風機密第15号の14 
第二艦隊機密命令第241403号に基づき電探射撃を実施。その経過と成績・所見を全ての細目にわたり記録 
このときの目標艦は駆逐艦「長波」
 d-5
【文字起こし版】
駆逐艦島風電探試験成績表18-9-17
第一回
時刻 目標 測定距離 測距儀に依る距離 測定方向角 実際の方向角 感度 記事
10-14-13長波 4000m  3100m       85°    83° 感3 +900、+2度
10-14-28長波 4000m  3100m       86°    83° 感3 +900、+3度
10-14-45長波 4200m  3100m       88°    83° 感3 +1100、+5度
10-15-07長波 4250m  3100m       88°   82.5° 感4,5 +1150、+5.5
10-16-38長波 4000m  3150m       95°    98° 感4,5 +850、+3
10-17-15長波 4000m  3200m       105.5°  103° 感4,5 +800、+2.5
10-17-40長波 4000m  3350m       104°  103°  感4,5 +650、+1
10-17-50長波 4000m  3300m       104°  103°  感4,5 +700、+1
10-18-30長波 4400m  3550m       105°  104°  感5 +950、+1
10-19-20長波 4600m  3650m       100°  102°  感5 +950、+2

8.電探取扱調整参考資料 軍極秘 電波探信儀取扱調整参考資料 第二艦隊司令部
商品の情報
ガリ版B412ページ 昭和18年10月17日第二艦隊機密第4号の28 
電探2号1型(対空用)の詳細解説、連合艦隊司令部付 橋本大佐の第二艦隊における講話記録 
表紙に「軍極秘」「駆逐艦島風」の朱印が捺してあります。
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9.電探参考資料 軍極秘 第五艦隊機密文書 電波探信儀参考資料
商品の情報
ガリ版26ページ 昭和18年6月25日第五艦隊司令部発令 
主に敵戦闘機・爆撃機に対しての電探戦闘方法の細目を指示 
表紙に「軍極秘」「駆逐艦島風接受」の朱印が捺してあります。
 d-7

その後の対水上射撃用電波探信儀の開発の経緯については下記の通りである。
「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会の抜粋版
(対水上射撃用電波探信儀)
二号二型系のものは、昭和十八年十月軍艦大和に於ける実験に使用した切換方式が不完全であることが判り、早くも整備の線から脱落したものである。
この結果昭和十九年三月射撃用電波探信儀研究促進に関する会議が開かれた。
その席上、使用出来ない主砲五砲台よりも、使用可能の主砲四砲台の方が有効である。
一砲台撤去しても射撃用電波探信儀を装備すべきだとの意見も出る位で、重量容積に対する制限も著しく緩和され、精度は多少悪くとも一応は射撃の出来る電波探信儀を同年六月末までに整備すべししの厳重な決議があった。
玆(ここ)に於いて二号三型(波長五八糎)、三号二型(波長一〇糎)及び二号一型の改良型が登場し、研究実験に異常の努力が集注せられた。
同年七月には二号三型及び三号二型が略完成したが、この頃には既に艦隊は殆ど全部内地を出港し、昭南島方面に集中中であった。
これがために装備上の制約も加わり二号三型は有効距離が少し不足と云う理由に依り、又三号二型は重量容積大にして装備工事に多くの日時と工数を要し過ぎるとの理由で実装備を断念するに至ったのである。
?に於いて窮余の策として、同年七月各艦に緊急装備した二号二型の操縦装置を改善し、これを以て決戦に臨むことに決意された。
即ち増力機の操縦装置竝に電探射撃に必要な諸関係装置を、人員と共に昭南島方面に特派し、第一〇二工作部に於いて最後の整備を行ったのである。
水上艦船の一斉整備は事実上これを以て終り、この装備の状態を以て緋想なる比島沖の決戦に突入したのである。この後対水上射撃用電波探信儀に対する要望は、急激に下火となったのであるが、研究は更に継続され、三号一型及び三号三型は昭和十九年末に至り完成し、同二十年一月、水雷学校所属の特一号練習艇に於いて実艦実験を実施し、略満足すべき結果を得た。
三号二型は出来る限り能力の増大をはかるため、従来採用した電磁ラッパのみを回転する方式を廃し、機器も電磁ラッパと共に回転する方式とし、且つ偏波面を整正にする目的を以て、矩形電磁ラッパを採用し、且つこれを大型となし、空中線利得を二十数dbに増大した。
左右二個の受信電磁ラッパの切換装置としはラッパの喉元で半円形のアルミニュウム板を電動機で回転して行う方式を用いている。
三号一型は、三号二型が重量、容積大で、非現実的であるとの非難に対し、二号三型に使用した架台竝に反射鏡を使用し、導波管を架台内部に収め、本体は同軸ケーブルを用いて接続し、空中線装置のみを回転する方式のものである。
三号三型は既装備の二号二型に小改造を施し、従来の有効距離を短縮することなしに、測角、測距精度を要求値に高めんとし、従来の旋回装置に矩形電磁ラッパを取付け、受信電磁ラッパを円筒式切換機器に依って切換え、旋回部に二重同軸ケーブルを用いて従来の導波管をその儘使用するものである。
しかし、三号一型及び三号三型はいずれも完成の時期を失し、実装備を見ずして、終戦となったのである。

なお、各レーダーの詳細については、下記のURLアドレスを参照願います。
2号電波探信儀3型(S8A)のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について

3号電波探信儀1型(31号)のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について
http://minouta17.livedoor.blog/archives/32619401.html

3号電波探信儀2型(32号)のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について
http://minouta17.livedoor.blog/archives/33200273.html

3号電波探信儀3型(33号)のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について


【総合コメント】
・2号電波探信儀2型の射撃管制レーダーの開発失敗について
「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会の抜粋版
(対水上射撃用電波探信儀)
2号2型系のものは、昭和18年10月軍艦大和に於ける実験に使用した切換方式が不完全であることが判り、早くも整備の線から脱落したのである。
上記公式資料のとおり、実験早々「切換方式が不完全である」との同じ理由で落第しているが、落第点の原因を考えることにしよう。
まず、今回の駆逐艦島風電探試験成績表は下記のとおりである。
駆逐艦島風電探試験成績表18-9-17
第一回
時刻 目標 測定距離 測距儀に依る距離 測定方向角 実際の方向角 感度 記事
10-14-13長波 4000m  3100m       85°    83° 感3 +900、+2度
10-14-28長波 4000m  3100m       86°    83° 感3 +900、+3度
10-14-45長波 4200m  3100m       88°    83° 感3 +1100、+5度
10-15-07長波 4250m  3100m       88°   82.5° 感4,5 +1150、+5.5
10-16-38長波 4000m  3150m       95°    98° 感4,5 +850、+3
10-17-15長波 4000m  3200m       105.5°  103° 感4,5 +800、+2.5
10-17-40長波 4000m  3350m       104°  103°  感4,5 +650、+1
10-17-50長波 4000m  3300m       104°  103°  感4,5 +700、+1
10-18-30長波 4400m  3550m       105°  104°  感5 +950、+1
10-19-20長波 4600m  3650m       100°  102°  感5 +950、+2
【考察】
一般的な従来の2号電波探信儀2型の水上見張レーダーの性能諸元は下記のとおりである。
2号電波探信儀2型の能力は、対戦艦35キロメートル、対駆逐艦17キロメートル、測距精度500メートル、測角精度3度である。
このデータと今回の射撃管制レーダーとの性能を比較すると以下のように考えられる。
射撃管制レーダーの測角精度は測定データのばらつき及び異常値もあるが、概ね1度から2度の範囲にはいっているので改造効果は認められる。
なお、この測定には、見張用指示機(Indicator for waring)が使用されている。
一方、測定距離に関しては、測距儀(Range Unit)を使用して水上見張レーダーの500mに対して、倍以上の測定誤差があることが判る。
したがって、海軍としてはこの測定距離の誤差を問題視したに違いない。
この原因を考えると、アンテナを附加装置(零感度用電磁「ラッパ」)に改修したことにより、受信機の受信信号は零となるときに見張用指示機(Indicator for waring)を使用して方位角の正確な測定ができる。
この実験データ結果からアンテナを附加装置(零感度用電磁「ラッパ」)に改修する効果はあったと判定できる。
この時の測定はアンテナの方向を角度受信機で読み取ることで可能となる。
e-0-0

 
一方、2号電波探信儀2型用の測距儀(Range Unit)を使用するということは、受信信号の最大レベルで測定する一般的な方式のままである。
これでは、受信信号レベルを意識的に最小にした信号レベルを測定するのであれば、測定誤差が大きくなることが想定される。
なお、試験成績表に「感度」の評価項目があるが零感度方式にもかかわらず感3から感5といった受信信号の強度が示されている。
一般的には感1が最小、感5が最大感度を示すはずだが、これは一体どういう意味を指しているのかを考えると以下の対応が考えられる。
最初に見張用指示機(Indicator for waring)を使用し方位角を測定した後、距離測定時には目標物から電磁ラッパの方向を少しずらし反射パルスが測距儀(Range Unit)のブラウン管で観測できるところで距離測定を行った。
このため、測距精度が悪化したのではないだろうか。
このため海軍では、「切換方式が不完全であることが判った」と判定されているが、実際は海軍とメーカー間のインターフェースの不整合が原因ではないだろうか。
【背景説明】
東京芝浦電気(社史からの抜粋)
当社はこの要請に応じて全力をあげて電探用送信機の試作に従事し、新規の真空管を製作することも含め昼夜兼行、ついに1か月後に所期の成果をおさめた。
これにより当社の技術的能力はきわめて高く評価され、またこの電探用送信機はその後も電探の一つの基本形となり、多数生産された。
その後製作された電探は、陸海軍ともに陸上用、船舶用、航空機用などそれぞれ数十種におよんだ。
その中には陸軍の対空用標定機のように全装置を当社で製作納入したものもあったが、海軍用として送信機及び指示機がおもであった。
戦争中、特に設計されたものの中に13号電探がある。

東京芝浦電気の社史からわかるように、海軍技術研究所からメーカー発注される電探(レーダー)についてはシステム一式の一括発注方法は少なく、送信機、受信機、指示機などと分割発注することが多い。
これは、海軍技術研究所が研究及び開発の主体でありメーカーは仕様のとおりに作ればよいとの驕りがみられる。
このため海軍用レーダー開発の各メーカーは、システム全体を把握することが困難でトラブルがあったとしてもメーカー提案ができにくい風土が相互に形成されたのではないか。
2号電波探信儀2型については、センチ波の磁電管(マグネトロン)を使用したレーダー開発できるメーカーは当時日本無線しかおらず、本来なら一括発注されたものだが、実際はアンテナと送信機及び受信機のみが日本無線で生産され、指示機は別メーカーが生産提供した可能性がたかい。(事実確認はできていない!)
このような理由で、開発メーカーとしては今回新開発した零感度電磁ラッパに対して測距儀への配慮が欠落したのではないか。
【次期開発への展開】
この試験結果を受けて、日本無線では射撃管制レーダーの開発の対応として、電子的位相調整方式から左右アンテナの機械的スイッチング機構による等感度方式とするとともに、アンテナも円形から更に大型な矩形型に変更してアンテナ利得も高利得なるように大幅な設計変更を行っている。
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・射撃管制レーダーの開発失敗の根本的な原因分析について
対水上射撃用電波探信儀のためには、最大感度方式から等感度方式による角度測定の精度を向上する必要がある。
当時日本陸海軍では日米開戦初頭におけるシンガポールとマニラ占領による英米の対水上射撃用電波探信儀の実物の鹵獲品や技術資料を入手しており、これを参考に60から200MhzのVHFによる対空射撃用電波探信儀を開発し、地上部隊に配備していた。
ただし、センチ波による対水上射撃用電波探信儀の開発には難航していたというよりも、2号電波探信儀2型の受信機の動作不安定や感度不足などにより対水上見張用電波探信儀としてのレーダーの本質的な課題の段階で難航していた。
しかしながら、昭和19年度になると対水上射撃用電波探信儀開発に対する等感度方式も日本の独自技術が発揮されるに至った。
2号1型は東芝の技術陣が従来の英国が開発した位相環(Phase Ring)方式から独自方式の発電板によるパルス制御方式を採用したが、技術的問題で公式資料のとおり撤去するに至った。
仮称三式二号電波探信儀一型指示装置関係取扱説明書案の解説

また本題の2号2型は日本無線が担当しているが、日本無線は陸上用の対空射撃用電波探信儀には参画しておらず、従来のノウハウがないまま今日でいうフェーズド・アレイ・レーダーの仕組みを考案したが、軍部には「切換方式が不完全」と判定され早々に撤去されるに至った。

【戦後日本無線がメーカーとして日本陸海軍への批判】
A short survey of japanese radar Volume 1からの抜粋
日本無線
e. 製造されたレーダー。日本無線の工場は注意深く2つの部分に分けられており、陸軍用の機器を製造する部門と海軍用の部門があった。一つのセクションで働くエンジニアは他のセクションに入ることは許されていませんでした。また、彼らのエンジニアは、艦船や航空機、地上の位置に設置された機器のテストを製造後に観察することも許されていませんでした。この方針は、会社の関係者から強く批判された。

【日本海軍技術研究所への批判】
研究員といっても帝国陸海軍の軍人であり、官尊民卑というか日本海軍技術研究所のほうがメーカーより優れていると錯覚しいたのであろう。
新規開発兵器には当然問題点が内在しており、これを研究員とメーカーが団結して課題を克服する必要がある。
新規開発した2号1型や2号2型も技術的なトラブルが発生するのは当然のことであったと思われる。
海軍技術研究所の研究員や海軍工廠の技術者のみで新規開発レーダーのトラブルに如何に対処しようとも開発したメーカーを含めて技術検証しないと問題点を根本的に改善することはできないのは自明の理ではないのか。
資料をみるかぎり、陸軍ではメーカーまかせの委託開発方式で海軍との垣根はさほどなく、技術的な干渉の話はあまり聞かない。

・昭和18年9月駆逐艦「島風」電探射撃、発射に関する実施による事故発生か?
本試験は電探射撃管制レーダーを使用した雷撃実験である。特に島風には零式5型5連装魚雷発射管3基が設備されていることから、電探による雷撃の効果を試したものである。
本試験で用いた曳的艦である駆逐艦「響」のウィキペディアを参照すると、下記の記述がある。
北方作戦の終了後は瀬戸内海での訓練任務に戻るが、その途中の8月9日から15日まで横須賀で魚雷発射管の改装が行われ、九三式魚雷の搭載が可能となった。その後は瀬戸内海に移ったが、魚雷発射訓練中に駆逐艦「島風」の発射した魚雷1本が誤って命中するという事故に遭い、再び横須賀に回航されて9月11日から16日の間に修理が行われた。
どうも事実かどうか不明であるが、この試験期間において島風が誤射したのか、模擬弾が的ではなく曳的艦である駆逐艦「響」に命中したようだ。
今回の2号電波探信儀2型による射撃管制用レーダーの方位角の測定誤差は1度から5度あるので、曳的艦である駆逐艦「響」が曳航している的間の短い距離では、誤射もありうる精度といえよう。

・電探による魚雷戦への応用について
「昭和18年9月駆逐艦「島風」電探射撃、発射に関する実施及びその経過と成績・所見について」の目的は、日本海軍はセンチ波の2号電波探信儀2型については、レーダー実用の当初から射撃用途以外に雷撃にも使用目途で計画していたことが裏付けられた。
レーダー測距による魚雷発射が以下のとおり実戦で使用されているようだ。
「元軍令部通信課長の回想」昭和56年 鮫島素直からの抜粋
スリガオ海峡海戦
昭和19年10月25日午前4時15分ごろ旗艦那智のレーダーが25度方向11キロメートルに目標を探知した。(注、米資料によればその附近には米艦はいなかった)敵集団と判断した志摩部隊は、那智、足柄の順に右に回頭しつつ魚雷各8本を発射し、駆逐艦を突撃させた。
サマール島沖海戦で、25日午前8時18分大和はレーダーで捜索しつつ南下中、200度20キロメートル煙幕の中に戦艦らしい目標を探知し、主砲で4分間レーダー射撃を実施している。
【参考情報】
捷號作戦戦訓抜粋(電波兵器)(昭和19年11月11日)
※大和がレーダー射撃したのであれば、本戦訓に記載されていないのは何故だろうか。

・2号電波探信儀2型レーダーの受信機の性能問題について
アンテナが直径75ミリメートルの円形導波管を使用するラッパ型に改められ、これだけを回転して機器や測定員は動かなくてよいようになって大きく改善したものの、受信方式の本質的な欠陥に対してさしたる対策のないまま、日向実験後の昭和17年後半から暫くは足踏み状態が続いた。昭和18年に入って、「無いよりましだ」といった中途半端な状態で、先ず3月には水上艦艇として43号駆潜艇から、また4月からは潜水艦として伊号158潜水艦を手はじめに逐次各艦に装備されていった。
しかし、この受信機に採用された「超再生検波方式」は本質的に高感度であるが動作が不安定である。
これに代わる方法として日本無線の伊東伝一郎氏提案による「オートダイン検波方式」の採用が検討され、昭和18年末に試作し、翌19年3月には、従来のものに較べてはるかに安定しており実用できるとの見通しがついた。
しかしながら、実際には動作は安定するが感度不足が生じ、実用運用には問題があるとの現場から声があがっていたようだ。
この問題を根本的に改善したのは受信器を「スーパーヘテロダイン方式」が実現した昭和19年7月で、8月から装備替え工事が急いで進められた。
この「スーパーヘテロダイン方式」は小型の磁電管による局部発振部から鉱石検波器により受信信号を取出し、広帯域の中間周波増幅段で増幅することにより、広帯域で安定的かつ高利得の受信機を構築できる。
これにより、日本もセンチ波の実用化レーダーによる運用が確立したとことになった。
このような受信機の改良の期間を見ると、2号電波探信儀2型の射撃管制レーダー試験は何れも受信機の問題がある初期型の「超再生検波方式」を使用していることから、自ずと性能を発揮することは当初から困難であったことが判る。
ただし、「スーパーヘテロダイン方式」が実現した19年7月以降においては、最後の艦隊決戦である捷号作戦が決した後のため、日本では組織的な艦隊行動ができる艦船は消滅していた。

・2号電波探信儀2型のレーダーの測定精度について
2号電波探信儀2型の能力は、対戦艦35キロメートル、対駆逐艦17キロメートル、測距精度500メートル、測角精度3度であった。
参考資料 22号射撃管制レーダーの性能(実測データ)
 e-3
※実測データから見る限り、測距装置の精度は合格だが、方位角の精度が悪すぎたのではないだろうか。

※参考情報 水上射撃用レーダーの測定精度について
日本 2号電波探信儀2型 
対戦艦35キロメートル、対駆逐艦17キロメートル、
測距精度500メートル、
測角精度3°

日本 2号電波探信儀3型(S8) 
探知距離 対戦艦22km
測距精度 ±50m
方位角精度 ±3.0°

日本 2号電波探信儀3型(S8A) 
探知距離 25km
測距精度 ±50m
方位角精度 ±0.4°
仰角精度 ±0.4°

日本 3号電波探信儀1型
探知距離 35km
測距精度 ±250m
方位角精度 ±1.0°

日本 3号電波探信儀2型
探知距離 30km
測距精度 100から250m
方位角精度 ±0.5°

日本 3号電波探信儀3型
探知距離 30km
測距精度 ±100m
方位角精度 ±0.5°

米国 SGレーダー
大型船で15マイル(24km)
レンジ精度は±100ヤード(91メートル)
方位精度:±2°

米国 フェイズド・アレイレーダー FH Mark 8
40,000ヤード(約36km)。
レンジ精度:±15ヤード(13.72m 
方位精度:0.1°から2ミル(0.11°)

米国 艦船搭載射撃制御レーダー FD Mark 4
駆逐艦で16,000ヤード、戦艦で25,000ヤード(22.8km)
距離精度、±40ヤード(36.5m)
方位精度±4ミル(0.23°)
仰角精度、(10°以上)±4ミル(0.23°)

陸軍の対空射撃管制レーダーの性能比較
 e-4


【参考情報】
・2号電波探信儀2型の指示機の操作方法について
A short survey of japanese radar Volume 3に22号の各種指示機の操作方法が具体的に記載される文書があった。
A short survey of japanese radar Volume 3からの抜粋
ディスプレイは2本のA型ブラウン管を使用する。「見張用指示機」と呼ばれる1本のブラウン管は、60kmまでのすべてのターゲットエコーを表示し、5kmごとに距離目盛が表示される。測距調整用クランクを回すと、3マイクロ秒幅の距離パルスが移動する。2番目のスコープ(測距儀担当オペレーター用)は、測距調整用クランクで選択された距離の約1000mを拡大表示する。スコープの前には拡大鏡があり、5インチブラウン管に相当する大きさになっている。目標物の輝線の先端がスコープに刻まれた垂直線とちょうど重なるようにセットすると、真の測距距離がダイアルで読み取れる。
22号セットの詳細な回路図は付録IIに含まれている。
22号セットのいく分か簡略化されたバージョンである改3は、潜水艦の艦橋内に設置されている。下の写真の1つに示されているように、並べて取り付けられた2つのホーンが使用されている。表示は75 mmの単一のスコープでA型のものである。潜水艦からの測定距離は戦艦に対して約10 kmである。

測距装置(測距儀)(Range Unit)
 e-1
(註)正面右下が位相調整器であるが、回転用クランクハンドルと距離メーターが見える。
本位相調整器には、ゴニオメーターが使用されているようだ。

位相調整器の拡大機能について
A short survey of japanese radar Volume 3からの抜粋では、【測距調整用クランクで選択された距離の約1000mを拡大表示する。】とあるが、この意味は位相調整器の位相範囲が角度180度で測定距離60kmとなるものが、減速用の歯車機構により角度180度で測定距離1kmに拡大する仕組みがあることを意味する。
したがって360度1回転で測定距離2kmとなるので、位相調整器のクランクを30回ほど回転させれば、測定距離60kmとなるような仕組みと考えればいいのだろう。
このバーニア機構により1度の測定距離は5.56mとなる。
測距装置の読取り精度を仮に±2度とすれば、測定誤差は±11.12mとなる。
ただし、実際の公式資料での22号の測距の測定精度500mとあるので、実際の精度は±9度のようだが、この実際の精度であれば射撃管制レーダーとしての運用は困難だったということのようだ。
この精度不良の原因は、アンテナに電磁ホーンを採用していることに大きな要因があるように思われるが、やはりセンチ波を使用するのであればパラボラアンテナを採用することが原則であろう。

方位角測定用の角度受信機の画面
e-2


【お願い】
本オークション情報の提供依頼について
昭和18年9月駆逐艦「島風」零感度用電磁ラッパを用いた電探射撃、発射に関する実施及びその経過と成績・所見について
出品者(評価): yamato_ozawa (617)
最高額入札者: edt156v_2003 (18)
開始価格: 7,000 円
開始日時: 2004年9月 21日 11時 41分
終了日時: 2004年9月 28日 21時 41分
オークションID: g6146367
最終的に誰が落札したかは不明ですが、本件落札者のかたには是非資料の電子情報を提供して頂ければ幸いです。
理由
附加装置(零感度用電磁「ラッパ」)の作動原理が欠落しおり、小生の推論が正しいものか検証したい。




参考文献
Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan, 1945-1946
「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会
「続日本無線史」第一部 昭和47年 続日本無線史刊行会
日本海軍エレクトロニクス秘史 田丸直吉 昭和54年11月 原書房
「元軍令部通信課長の回想」昭和56年 鮫島素直
A short survey of japanese radar Volume 1 1945年11月20日
A short survey of japanese radar Volume 3 1945年11月20日
無線工学ハンドブック 昭和29年11月 社団法人日本電波協会
電気回路1
https://www.osakac.ac.jp/labs/matsuura/japanese/lesson/ElectricCircuit/
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』



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